2018/02/06 15:03
今日から、いろのおはなしを書いてみようと思います。
色って、文化だと思うのです。
時代をつくってきたものであって
時代を翻弄してきたものでもある。
ということは、
人の心を動かすものだということ。
そして大切なことは
色は自然界のものだということ。
決して、人間がつくったものではないのです。
空だけでも
春の空、夏の空、秋の空、冬の空。
晴れの空、雨の空。
いろんな色がある。
地球ができたその日から
人間が生まれたその日から
ずっと人間は、色に囲まれて生きてきたのです。
なんか胡散臭い学者みたいな話が始まりましたが、
今日は、「赤」のおはなし。
『赤』からみる、『粋』の美学。
お話は、江戸時代にさかのぼります。
歌舞伎では、赤い着物をきた武家の姫君のことを、「赤姫」といい、
いろいろな作品で描かれた姫が着ていた
紅花で染められた赤い着物は、当時の女子たちの憧れでした。
そう思うと、今も昔も変わらない。
ドラマ「逃げ恥」の視聴率がぐんぐん上がり
新垣結衣ちゃん熱が急上昇したとき
「みくりさんヘアにしてください」というオーダーが
各地の美容院で殺到したように、
昔の女子たちだって、流行りに敏感だったんですね。
ちなみにわたしの友達は、
美容院で「みくりさんヘアにしてください」とお願いしたらしいのですが、
できあがった友達のヘアスタイルは
どちらかというと、阿佐ヶ谷姉妹でした。
話を戻します。
紅花で染めた着物の人気が急上昇するなか、
幕府は「奢侈禁止令」を頻繁に出し、国民の贅沢を禁じました。
派手な服着るんじゃないよ!贅沢するんじゃないよ!ってこと。
びっくりするのが、
百姓は木綿しか着ちゃあかん!とか、
庄屋や百姓は、紫根で染めた本紫や紅花で染めた紅梅色なんて着ちゃだめ!
なんて、超差別的なことを言っていたのです。
今じゃぁ考えられません。
でも、
百姓たちも、黙ってませんでした。
いいもんね~隠れて着ちゃうもんね~的な。
まるで、
高校のうわ靴に落書きして怒られたので、
新しいうわ靴の中に、
当時好きだった
サッカー トルコ代表のイルハン選手の似顔絵を書いて
こっそりとイルハン靴を履いていた、当時のわたしのように。
(↑何やってんだ。ちなみに似顔絵は全く似てませんでした。)
バレないように、表地は木綿で地味。
・・・に見せかけて!
裏に、鮮やかな色を密かに施し、纏っていたのです。
鮮やかな色を染めるにしても、本紫や紅梅色は、禁止されていたので、
それじゃぁ・・・と、その色に近い、
偽紫や偽紅梅という色まで作っちゃって、
その色を染めた裏地を施していたのです。
京都の甚三郎さんという人が作った、
紅花のかわりに茜で染めた「甚三紅(じんざもみ)」という中紅色は
超絶怒涛の人気ぶりだったそう。
そのほかにも、
この時代、地味色である茶色や鼠色を深堀りする人もいっぱい出てきました。
「四十八茶百鼠」といわれるように、いろーんな微妙な色合いの
茶色と鼠色が生まれました。
この時代に、染色技術が発達したことも、理由としてはあるかもしれません。
ちょっと紅梅っぽい、赤っぽい梅鼠色や
藍色がかった藍鼠
抹茶みたいな深い緑っぽい、利休鼠などなど
同じ茶色や鼠色でも、すんごいバリエーションの色が生まれました。
もうそれって・・・
好きな色を纏いたい!
おしゃれしたいよー!という、江戸っ子の「意気」なんですよね。
禁止されたって、おしゃれしたいもんはしたい。
そしてさらなる
「意気」が感じられる色の纏い方。
江戸の町人たちは、
紅花で染めた着物を纏いたいあまり、
長襦袢にしちゃったんですって。
長襦袢って、ヒートテック的なね。下着のことです。
中に着ちゃえばいいやん!ってこと。
想像してみてください。
颯爽と風を切って江戸の街を歩く町人。
真っ黒の着流しの下から
チラリと見える、鮮やかな紅色の襦袢。
おしゃれだよね~。
「粋」だよね~。
唸っちゃいそうなくらいかっこよかっただろうな。
昔の人の、
おしゃれしたいんだもん!っていう「意気」は
日本人の色への美意識であり
「粋」の美学だな、とわたしは思うのです。
赤にはいろんなお話があるけど、
今日は「禁じられた色」としての「赤」。
赤い色着るなー!って言われ
禁止された「赤」からみる、日本人の「粋」のお話でした。